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私と彼との間には、目には見えない、
だけれども誰から見たってはっきりと分かる、隔たりがある。

その隔たりを、あたかも劣等感のように強く意識してしまっているのは
私だけなのだ、と言うことも、しっかりと分かっている。

それでも、そう思ってしまうのは仕方ない事なのだ。

心に酷く焼きつく感情と言うものは、そういうものなのだから。


こんなにも近くに居るのに、手を伸ばせば触れることの出来る範囲に居るのに。
その隔たりは一向に縮まることは無くて。

いつも思う。


十余年の歳の差が、こんなにも痛い。



馴染みのバーに顔を出してくる、と、今夜も彼はこの家のリビングを出て行こうとする。
リビングから廊下に出る前に一度、ふわりと振り向いて、意地悪く、彼は笑った。

「なぁ」

「…なに?」

「お前さんも、一緒に来るか?」

「意地悪。私が絶対行けないの、知ってるくせに!」

「は、まぁそう怒ンなよ。冗談だ」


力の限りで投げつけたクッションを、彼はいとも容易く受け止めて、
さっきまでの意地悪そうな笑みを、今度は至極楽しそうなものに変えて、
私の方へ、クッションをふわり、投げ返してきた。


「はやく帰ってきてね?」

「直ぐだ。お前がベッドで目ぇ閉じて、次に開けたら傍に居てやるさ」

「瞬きだけして起きてやる…」

「ばぁか。ちゃんとゆっくり寝とけ」


もう一度リビングに足を踏み入れた彼は、私の隣に腰を下ろして、
未だに不満を全面に押し出した顔をしている私の頭を、
少々乱暴に、ぐしゃぐしゃとかき混ぜる。


「大人しく待っとけよ」


と、言い残してまた立ち上がろうとする彼の背中を、
今度こそは逃がすまい、と、私は力の限り抱きしめた。

格好は、不恰好で、どちらかというと抱きつく、といった方がいいのだろうけれど
今主導権を握っているのは紛れも無く私であって彼ではない。
その証拠に、彼の体は私の腕の中で身じろぎもしなければ、
そっと腕を外そう、などともしてはいない。


「今日は此処で飲めばいいじゃん。お酌くらいできるよ、私」

「………あぁ、……そうだな、それもいいかもしんねぇな」


その言葉に、はじける様に顔を上げれば、少々いつもより高潮した頬の横顔が見えて。
そのまま彼は、私が回した腕すら解くこともせずに、
ただ顔だけはしっかりと私のほうを向いて、言った。


「あと少し、か。…お前がバーに行けるようになるまで、待っててやるよ」


彼の、ただただひたすらに優しい笑顔が見えたのは、ほんの一瞬で、
真っ暗な視界の先、彼のコロンの香りがはじけた。


こんなわがままを彼が聞いてくれる。
溜息一つつかずに、傍に居てくれる。

十余年の歳の差が、今、こんなにも嬉しい。


だから私は、いつも

彼が絡んだ時は、いつも



ジョウチョフアンテイ






…だから次元さん大好きって言ってるだろォォォ!(開きなおり
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