[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「付き合って、ほし…ぃんだけど…」
正直な話、え、なにそれ?と思った。
自分が告白されてる、という事態を、じゃないよ?念のため。
私、そのくらいは分かっているんだけど。
ただ、え、なにそれ?と思ったのは、
紛れもなく今目の前にある光景について。
目の前、つまり今私に告白なぞをしてくれてる、
この男について、と言い換えた方がしっくりくるかもしれない。
今私に告白してくれた人は、私が大好きな人だ。
つまり、私も恋愛感情でこの人の事が大好きだし、
勿論、私だっていつかは告白したいと思っていた人だった。
だからこそ、今の告白は延々私の頭の中でリピートされるほど
寝ても冷めても聞いてみたい、言われてみたい、と思っていたものだし、
ソレが現実になったのだから、本当なら直ぐにでも
「私も貴方が好きです、ずっと前から大好きでした」
なんて、3流映画みたいにクサい台詞でも繋げて、
この人の胸に飛び込んでしまっても良かったんだと思う。
ただ、私の行動は、この人が告白する前に呼びかけられて、
はい、と返事をした所からぴたりと止まっている訳で。
理由らしい理由は、もうこの人にあるとしか言いようがない。
理由、それは何とも単純なもので、
私がそんな可愛らしいことをした所で、この人には敵わないからだ。
何でこんなに、可愛いんだ、この人は。
「あ、の…さ、だめ、かな。やっぱ。」
私がそんなことを考えて、何のリアクションも返さずにいると、
沈黙に耐え切れなくなったのか、少し詰まりながら問いかけてきた。
私よりもこの人の方が身長は高いし、私のほうが見上げる形になっているはずだけれど、
この人の、遠慮がちに聞いてきた、ちょっとだけ掠れた声とか、
一大決心してくれたんだろうな、真っ赤に染まった頬とか、
(あ、耳まで、赤くなった)
少し潤んだ、色っぽいはずのまなざしとか。
すべてが、可愛く見えてしまうから不思議だ。
きっとこの人が居ること自体、可愛いという魔法が掛かってしまっているんだ。
だから、私は、もっとこの人の可愛い様を見ていたい、と思ってしまう。
それくらい、この人の可愛さは破壊力抜群で、
私の心を捉えたまんま、離してくれない。
「付き合うって、」
「うぇ!?あ、ごめ、…うん。……うん、何?」
「お買い物ですか?」
「…そうじゃなくて、あ…でもソレも…今度御願いしたい…んだけど、」
私がわざと言った、的外れな回答に、動揺したり、落ち込んだり、
顔はどんどん赤くなるし、目線がうろうろ。
私よりも大分年上なのに、可愛すぎるなぁ、と思う。
「俺が言いたいのは、そうじゃなくて、」
あぁぁ、もう!と、珍しく大きな声が聞こえてきたかと思えば、
次の瞬間には私の腕はこの人に捕らえられていて、
軽く、壊れ物を扱うような力で引き寄せられる。
勿論バランスを崩すことなく、私は一歩前に出るだけだけれど、
それだけで、この人との距離は埋まってしまった。
いつのまにか、この人の腕が、優しく優しく私の背中に回っていたからだ。
ふんわりと私を包み込む、その腕は軽く震えていて、
その腕の震えは緊張なのだと、布越しに鼓動が教える。
勿論、私の鼓動も、この人と同じ動きをしているのだけれど。
そのまま、暫く固まった後、耳元あたりで、深呼吸する息遣いが聞こえてきた。
緊張を、解いているんだ、必死に。
可愛い。 私より、大分大人なのに。必死だ。
「あのさ、俺。」
「何ですか?」
背中にあった、この人の手が肩に置かれて、距離が開いたら、
「君の事、恋愛感情、込みで、好きなんだけど」
今までの可愛いかったこの人は居なかった。
痛いくらいに真剣な瞳をした、おとこのひとだけが、居た。
今までの可愛い人は居なくなってしまっているのに、
私は違和感なくその事実を受け止めてしまっていて、
おとこのひとはいつでも男になれるから、ずるい、と、
ただ顔を赤くするだけだった。するしか、なかった。
こんなひとはしらない、
そう、思うよりも先に、
可愛いのに、いきなり格好良くなるなんてずるい、
としか、思えないなんて、何だか酷く滑稽だけれども。
「だから、俺と、付き合ってよ」
と、再度の告白に首を縦に振れば、
数瞬遅れて、このひとはまた、さっきまでの可愛い人へと戻った。
可愛すぎて、格好良すぎて、
自覚もないのに変貌するこの人は、
どうしようもなく、ずるい。
さてさてこれは誰なんでしょう うえへへへへへぇ。